update:2025.06.03
通常のTVCM制作の場合は、企画からOAまで2ヶ月程度のことが多いのですが
昨年は1年をかけて、TVCMシリーズを制作しました。
当ブログでも制作風景や制作秘話的なものを紹介することもありますが
今回は、普段あまり知ることのないCM制作の流れを時系列に沿って紹介できればと思います。
まず、今回の企画の発端ともいえるプロモーションの使命は
「JA全農長野の経済事業の大切さを知ってもらう」ということからスタートしました。
JAの根底にある協同の精神、そして生産者と生活者をつなぐ役割をどのように伝えていくのか。
まずは、JA全農長野の様々な事業、そして役割を勉強するところから始めます。
幸いにも、以前にもJA関連でCMに携わらせていただいたことがあるので、その時の資料や経験も合わせて
企画の方向性を考えました。
遡ること、2023年の9月のことです。
この時にはすでに、春夏秋冬のシリーズで企画を考えていて、
まずはキャッチコピーを絞り出すところから始めます。
ぼくの場合は、半日ぐらい「ん~~っ」とうめき声をあげながら
言葉やフレーズ、単語などを思いつくままにメモしていきます。
どんどん出てくることもあれば、ポロポロしか出て来ないときもあり、
毎回苦戦しています。
残り半日は、本を読んだり、ふらっと車を運転しながら頭の中のヒントを
探したりします。
これを数日繰り返します。まず一日でまとまるなんてことはなくて、結果的に
一日目のアイデアだったりする場合もありますが、時間がある限り粘ります。
そうこうしている間に映像や表現のアイデアもだいたいまとまってきます。
そうやってまとまってきたコピーやアイデアを頭の中で組み立ててぼんやりですが
全体の流れも見えてきます。
ぼくの場合は、ここからが大事なのですが
あせって絵コンテにしません。
自分を焦らします 笑
絵コンテを書きながら、迷ったり考えたり書き直したりが好きではなく
絵コンテを書くときはバーッと一気に集中したいのです。
例えるなら、超腹が減っている時にカップラーメンを待つ心境です。
あと、出来ればこれも集中したいので休みの日に出社して書きたいのです。
音楽をガンガンかけて誰もいない社内で身体を動かしながら、なんなら歌いながら書きたいのです。
提案用には、イメージボードと合わせ3方向の案を考えました。
そこから、エージェント、クライアント担当者含めアイデアをより具体的に練っていきました。
提案した3方向から1案に絞られ、企画の方向性が決定します。
さぁ、今度は決まった企画、絵コンテを基に、実際の事業内容と照らし合わせ
内容や実際の現場と相違がないか確認作業がクライアント側から入ります。
CMの演出はフィクションとはいえ、農家の方や現場の方が違和感ある部分は修正していきます。
そうして、最終提案した企画がクライアント側のチェックを通るといよいよ具体的な制作に入っていきます。
正式に決まったコピーが
「春には春の JA全農長野です」
これをベースに春・夏・秋・冬の4本のCM制作が決定しました。
春から撮影に入れるように準備を進めます。
撮影の前の段取りとして決めていかなければならないのが大まかに以下の点です。
・撮影場所(これは事前にロケーションを探します・同時に許可等も確認します)
・出演者(こちらもイメージに合う出演者の選定とスケジュールの確保)
・制作スケジュール(季節にならないと撮影出来ないものもあるので年間を通したスケジュール)
・制作スタッフの確保(撮影やメイクなど必要なスタッフを揃えます)
・衣装小物などの準備(必要に応じて、レンタルまたは購入して準備します)
[撮影場所]
撮影場所については、クライアント側からの紹介も含め数カ所にロケハン(ロケーション・ハンティング)に行きます。
カメラマンも一緒に行ってカメラテストも兼ねて、太陽の方向、イメージに合うロケーションかどうか、撮影は何時頃がベストか
その他にも、撮影関係者の車の駐車場所、トイレや昼食をはさむ場合は食事の場所等も確認します。
もちろん、道路や施設の撮影許可等も撮影場所の警察等に足を運び事前許可を申請します。
やることも多いので、ロケハンに数日かかる場合もあります。
後日、この時の写真や位置情報などを基に関係者が困らないように、場所や時間等の資料を作ります。
[出演者]
出演者については、今回年間通しての撮影になること、それに合わせてスケジュールを確保出来る出演者を地元のエージェントに
手配してもらい数名の候補者のなかからイメージに合う方を選びます。
出演者選びについては、ぼくはあまり迷わないので今回もファーストインプレッションで決めさせていただきました。
もちろん、クライアントにも確認はしますが演出上のイメージを伝え、毎回監督のおすすめとして提案するのでブレることはありません。
[衣装]
今回は、フィクションとして撮影するので、JA職員さんの衣装は実際使われているものではなくオリジナルで用意しました。
服のイメージとJAのマークやJA全農長野のロゴなどは、刺繍の型を作ってもらい一点物として作りました。
そのほか、長靴や手袋など映像上で映るもののほとんどの衣装については細かくイメージに合わせて用意しました。
[演出]
TVCMは15秒と短い尺ですが、絵コンテに沿って細かい演出プランを練ります。
もちろん、当日になって現場合わせで調整することもありますが、カメラワークなどに関係する部分は
事前にカメラマンと詰めておきます。
今回は、クレーンやレール、ドローンなどセッティングや設置に時間のかかる撮影機材も使用するため
入念に用意します。カメラマンとは旧知の仲なのでたまに言い争いながら(笑)イメージを共有します。
ロケハンの資料と演出部分・スケジュールなどを香盤表にまとめます。
こちらには、当日の分刻みの細かいスケジュールや注意事項などを入れ込みます。
撮影はロケが多いので、スケジュール調整が大変です。
事前に撮影日のほかに、天候が悪かった場合の予備日も設けてすべての関係者のスケジュールを押さえます。
天気が安定しない場合の撮影可否についても、ディレクターの役目なので毎回天気とにらめっこです。
ここだけの話しですが、責任の重い嫌な役です。
これらの段取りを踏んで、ようやく撮影当日を迎えます。
地方の制作プロダクションあるあるですが、このような事前準備はほぼ、ぼくとアシスタントの2名で行います。
一人何役もこなしながら通常何件もの案件を同時に進行しています。
毎回こんな感じなので、企画から始まった道のりを考えると最初のカットを撮影するときは感無量で
「ヨーイ!はい」と撮影の声をかける瞬間は監督の特権だと感じています。
イマジンの撮影現場はこのように事前準備にしっかりと時間をかけるのでいつもスムーズです。
大体、わきあいあいと撮影が進んでいきます。今回も、出演者の方々もイメージに合うイメージ、そして演技をしてくれて
ほぼすべての現場で予定通りに撮影を終えることが出来ました。
撮影した映像は、編集プロダクションでの立ち会いのもとカット決め、編集、ナレーション収録と進み
1本のCMへと完成していきます。絵コンテを基にはしていますが、コンテと違うシーンやカットもあり
そこは編集者のセンスが光る部分です。完成形を見ると15秒はあっという間ですがここにたどり着くまでに
たくさんの人の手や多くの時間が費やされてひとつのCMとなっています。
ざっと流れを紹介しました。CMを作るのがもちろん仕事なのですが
やはり一番は、完成したCMがどのようなパフォーマンスを発揮してくれるのかということです。
ダイレクトに見えない部分でもあり、CMが出来上がった喜びというのは正直に言うとあまりないかもしれません。
どちらかと言うと子を見守る親のような心境でもあり、作ったCMに対しての責任をいつも感じています。
多分、まわりから見るとこの感覚は不思議かもしれませんが・・・
出来上がった後でプレッシャーを感じているのかもしれません。
ただ、面白いことに企画から制作している間にはそういったプレッシャーはあまり感じることがないんです。
ひたすらゴールにむかって無我夢中で進んでいる感じに近いかもしれません。
たぶんそうじゃなきゃ、プレッシャーに押しつぶされてしまうんでしょうね。
そりゃ、企業のイメージを作らせていただいているんだから責任重大です。
と、いうことでなんとなくシリーズCM制作における流れなんかをご紹介しました。
企画からはじめて、最後の冬篇を作り終えるまで約1年半かかりました。
終わってみるとあっという間でしたが、たくさんの人とたくさんの経験に出会った仕事だったなって思います。
今も何本か新規の企画を進めています。
ここまで長いスパンではないと思いますが、やはり準備がすべてです。
しっかりと一つ一つ進めていきたいと思います。
イマジンのプランナー兼、コピーライター兼、ディレクター兼、コンテ書き兼、雑用兼、なんでも屋兼の霜方でした。
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